アフィショマニ！ミュシャマニ！

1880年代、パリの街頭には名だたる“ポスターの巨匠たち”による、多色刷りリトグラフの鮮やかなポスターが彩られていました。道行く人々の目を魅了するポスターは、もはや“広告”ではありません。ポスターは、誰もが親しめる民衆の芸術として、新たな価値を持ち始めます。そこに現れたのがポスターを集める愛好家たち。“アフィショマニ”（ポスターマニア）という言葉ができるほどに、ポスターを集め、愛で（眺め）その素晴らしさを語り合うことが、個人の芸術趣味へと広がっていきます。
このポスター黄金期のパリに颯爽と登場したのが、アルフォンス・ミュシャ。ポスターの色彩、画面構成に新風をもたらします。他作家と一線を画したミュシャ・スタイルは、ポスターという広告媒体を超えて、室内を飾り、さらに手元で楽しむアイテムへと昇華され、ベル・エポック（良き時代）のパリを沸かせました。
本展は、「収集」という側面から、ポスターが新たな芸術として価値を高めた様相を浮かびあがらせる試みです。ポスター収集家、芸術家だけでなく、評論家、画商、印刷所、出版社ら、ポスターをめぐる人々も欠かせません。
今もなお “収集欲”を掻き立てられる19世紀末のポスター文化に触れながら、ミュシャのポスターの魅力、デザイナーとしての手腕を味わい尽くしていただけますと幸いです。